生殖心理カウンセラーによるカウンセリングの方法:意思決定カウンセリング

近年の生殖医療の発展はめざましく、不妊に悩む人々に希望の光を与え、新たな命の誕生を支えています。現在、日本国内で不妊症に悩むカップルの数は6組に1組、不妊治療患者数は50万人を超えましたが、生殖医療では、不妊の原因を特定し、軽度~高度な治療を実施します。場合によっては、生殖補助医療と呼ばれる「体外受精(IVF)」や「顕微受精(ICSI)」による治療も行います。治療が高度になるほど治療費も上がり、患者が抱える金銭的・身体的・心理的負担も増えてゆきます。

最近まで、生殖医療の分野では、不妊治療を受ける患者に対する「心のケア」の方向性に関しては明確なガイドラインが存在せず、個々の臨床医の裁量に任されてきました。そこで、生殖医療を科学と心理学の両方からアプローチすることで、不妊に悩む患者の心身を包括的・総合的に支えるべく設立されたのが、日本生殖医療心理カウンセリング学会(平成27年からは日本生殖心理学会)です。

日本生殖心理学会では、不妊心理臨床に関心を持つ心理士を対象に「生殖心理カウンセラー」の育成を行い、同学会から認定を受けた生殖心理カウンセラーは、生殖医療の現場で医師・生殖医療従事者と連携して、患者のケアを行います。

・意思決定カウンセリング

患者は、不妊治療を行う上で幾度となく「治療の選択」を行う場面に遭遇します。軽度な治療から高度なものへとレベルを上げて行く場合、医師から治療内容・効果・リスク等に関する説明を受けた患者は、自己責任で治療内容を選択・非選択の意思決定を行うよう求められるのです。しかし、患者が意思決定を行うには時間がかかります。度重なる治療の失敗に悩み苦しみ、現在の治療法への不信を感じる人もいます。また先が見えないことへの絶望感に苛まれる人もいます。生殖心理カウンセラーはそんな患者の気持ちに寄り添い、医療の視点ではなく、心のエクスパートとして患者の主観を傾聴することで、患者自身が自分や家族と向き合い、納得できる選択(意思決定)ができるようにサポートする役割を担います。